ゆうの足あと

わたくし、オーナー"ゆう"の生活の中心である「研究」「音楽」「妻との生活」がトピックです。

藍坊主がNewミニアルバム"木造の瞬間"を出した

 2018年1月24日、藍坊主が3rdミニアルバム"木造の瞬間"(読み: きづくりのしゅんかん)をリリースした。前フルアルバム「Luno」から数えると約1年4か月ぶりのアルバムとなる。リリースの間隔は決して長くはないが、藍坊主というバンドがその期間に乗り越えたものの大きさをうかがわせる、それほど素晴らしい作品にだと感じた。本記事では、木造の瞬間のレビューと、アルバムから私が考えたことを書きたい。

 

 

 まず、ミニアルバム自体の情報を載せておく。

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木造の瞬間

初回限定盤 価格:2,800円(税抜):TRJC-1077
「木造の瞬間(CD+ストーリーブックレット)」 
通常盤 価格:1,800円(税抜):TRJC-1078
「木造の瞬間(CD)」

1. 群青

2. ダンス

3. 嘘みたいな奇跡を

4. 同窓会の手紙

5. トマト

6. かさぶた

7. ブラッドオレンジ

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 初回限定盤には、こんな感じの32Pのブックレットがついている。

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 内容は、ここ7年くらいの藍坊主の苦悩や、現在へたどり着くまでの長い道のりが、ボーカルhozzyの一人称視点で語られている。本作で藍坊主を知った人にも意味あるものであることは間違いないが、古くからのファン、特に最近の藍坊主の行く末を案じていた人たちに強く購入をお勧めしたい。後にも述べるが、私たちリスナーが感じてきた不調和間や違和感の原因について詳しく書いてある。

 

 曲は全部で7曲。ちょうどいい曲数で、聴き疲れすることなく一枚通して聴ける。ブックレットやインタビューにも書いてあるように、全体のテーマは、「別れ」。モノやヒトからの「別れ」を、曲たちはいろいろな視点から描き出している。ここからは、各曲のレビューに移る。

 

1. 群青

 名曲と語られるハローグッバイやジムノペディックよりも少し速いテンポで駆け抜ける、一言でいうと「かっこいい」曲である。この曲は、YouTubeで先行配信されていたので、早くから見ることができた。現在も見られるので、まだ聞いていない人はぜひ聞いてみてほしい。藍坊主らしい、突き抜けるようなギターロックと感じることだろう。

 

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2. ダンス

 サビ→Aメロ→Bメロ→サビ→Aメロ→Bメロサビ→Cメロ→サビ大サビ という楽曲構成。「星のすみか」を彷彿とさせる構成である。この曲は、Hozzyのこれまた突き抜けるような歌声から入って、とても心地よい。メロディーも良いが、特にコーラスがきれいに入っていて曲を豊かにしていると感じた。Cメロ後のサビでなっているベースのオクターブ音が気持ちいい。

 

3. 嘘みたいな奇跡を

 私はこの曲をYouTubeで見て、本ミニアルバムの購入を決めた。PVは下で見られる。初めて聞いた時、超「ど」ストレートな歌詞と曲に衝撃を受けた。しかし、これが藍坊主なのかもしれない。この曲をほかのバンドが演奏しているのを想像できない。それほどにイメージとマッチした曲である。細々とでもいいからバンドを続けてくれていて良かった、と心から思った。

 

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4. 同窓会の手紙

 個人的には本アルバム中一番の変化球だと思っている。どうやらHozzyのソロ活動"Norm"の曲らしい。なんといっても、ベースのラインが格好いい。低域を絞ったギターとベースがよく対比され、一筋縄ではいかない曲に仕上がっている。この曲を聴くときには、ぜひ低音の再現性が良いヘッドホンを使ってみてほしい。

 

5. トマト

 一見優しい雰囲気の曲である。音数も多すぎず、安心して聞くことができる。一方、歌詞は非常に悲しい。何か、自分にとても近い存在との別れを感じる。その存在は人それぞれなのかもしれないが。

 

6. かさぶた

 再び疾走感のある曲が来る。この曲は、わかりやすく近年の藍坊主の状態を歌ったものと感じる。しんどければ、やめても良い。しかし、それでもやめなければ、それだけでも意味があるのだと背中を押してくれる。

 

7. ブラッドオレンジ

 アルバムのトリを飾るのは、ストレートな青春の歌である。この曲を聴くと、昔、インディーズアルバムの"藍坊主"や"ヒロシゲブルー"を聞いていたのを思い出す。ただし、本人たちの視点が異なる。昔の曲が、青春している側からの視点だったのに対し、この曲は遠い青春を懐かしむ目線で語られている。私ももう25歳で、青春しているとはとても言えない年齢になってきたので、現在の視点のほうが幾分体になじむ。これからの藍坊主の活動がより一層楽しみになる、そんな風に思わせてくれる終わりだった。

 

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 さて、ここまで各曲について簡単にレビューしてきた。最後に、9年来のファンの一人として、このアルバムに対する考え書きたい。

 

 私が藍坊主を知ったのは、フォレストーンが出たすぐあとくらいだったと思う。当時所属していた軽音楽部の友達に勧められたのがきっかけだった。hozzyの突き抜けるような声と、独特な雰囲気、歌詞の言い回しが好きになり、よく聞くようになった。その2年後には藍坊主のコピーバンドを結成し、たくさんの曲を演奏した。新しい曲をいつも楽しみにしていて、これまでに買ったCDは今も手元にある。

 そんな中、次第に藍坊主の様子に違和感を感じてきた。6thアルバム"ノクティルカ"が出たころだろうか。一番顕著だったのはhozzyの歌声だった。突然に、なぜかとてもしんどそうに歌う印象を受けた。それは、CDだけでなく、ノクティルカのレコ発ライブに行った時もそうだった。

 どうしたのだろうと不安に思っていたが、その答えはすべてブックレットに書いてあった。詳しくはぜひ読んでほしいが、2011年3月の東日本大震災に大きな衝撃を受け、音楽の力を信じられなくなってしまっていたらしい。そんな心境の中、新しく良いものを作り出すのは困難であろう。そういった状況が曲を媒介として、違和感という形でリスナーに届いたのだと思う。

 2011年以降にもたくさんいい曲が生まれていると思う。ホタルや生命のシンバルはその代表だろう。しかし、全体としてはちぐはぐな印象が受け、なかなかリピートし続けることがなかったのが本音である。

 

 しかし、本作はそれらとは一線を画していると感じる。個々の楽曲ももちろんだが、バンド全体が何をしたいのかが、クリアなアレンジとマスタリング、そしてhozzyの声に乗ってこちら側まで伝わってきている。本アルバムは、きっとこれからも何度も繰り返し聞くことになるだろう。

 

 

 そろそろまとめに入る。藍坊主は、バンドとしてのつらい時期を乗り越え、素晴らしい曲たちを届けてくれた。さらにそれらは、これからの彼らの活動をさらに期待させる内容だった。また、バンドの変遷を通して、人の思う力がとても大事であることを教えてくれた。これから第一線へ躍り出ることは難しいのかもしれないが、無理なく続けられる状態で、これからも藍坊主にしか描けない世界を創っていってほしいと思う。